安藤 入社してからはどんなお仕事をされましたか。

赤井 営業・開発の仕事に携わり、磨きや釉薬(ゆうやく)を駆使して、新しい商品の開発に尽力しました。こだわった商品は手間やコストがかかりますが、有名デザイナーのマンションの外壁に使っていただいたこともありました。そうやって自社開発した商品は、本社の一角をショールームにして飾ってあるんですよ。

 2000年以降、歴史的な建造物の修復・復元のお話もいただけるようになり、最初にきたのは、東京の日本工業倶楽部会館が建替えを行うということで、その外壁タイルの復元の依頼でした。横河民輔氏が設計し、1920年(大正9年)に創建された歴史ある建造物です。そこで実際に使われていたタイルと同じ色・質感を、汚れも含めて再現してほしい、と。クライアントは全国のタイルメーカーと競合させて、一番良いものを選びますから、一筋縄ではいきません。歴史的な建造物の復元という、弊社になかった新しい道を切り拓きたいと社員一丸になって、原料と顔料の調合具合、窯の温度調節、当時の製法の再現……日々、試行錯誤の繰り返し。結果、弊社のタイルが採用されました。タイル屋冥利に尽きる仕事でしたね。

安藤 他にはどんな物件を手がけられましたか。

赤井 江田島旧海軍兵学校、成蹊大学本館、両国国技館、東京中央郵便局など国内の歴史的な建造物の外壁の復元も、弊社の再現性の高さが認められ、任せていただくことになりました。海外ではジオ・ポンティが設計したイタリア・ミラノのサンフランチェスコ教会の外壁の復元もやらせていただいたんですよ。

 その中でも特に思い入れが強いのは東京駅の丸の内駅舎の外壁タイルを作らせていただいたこと。一度は大手タイルメーカーさんが自社で作ると話が決まったのですが、サンプルと工場で生産したものが、微妙に風合いが違ったことで話が流れてしまったんです。しかし、この仕事は何としても取りたい! ということで弊社にお話をいただき、大手さんとタッグを組んで再挑戦。最終的には2社での争いとなった末に、勝ち取ることができました。

安藤 東京の入り口である、東京駅のあの「赤レンガ」を手がけられているなんて、素晴らしいですね!

赤井 東京駅の場合、実際にお話をいただいたのは施工の10年以上も前になるのですが、長い時間をかけ、ようやく施工されたものを見るのは感動的ですね。古いタイルの復元では、実物が作られた当時の色を再現するのは容易ではありません。素材の量や質、窯の温度など今までに蓄積されてきた技術を元に、こういう色になるだろうと予測する職人技の世界。昔は窯や焼成技術も発達していませんでしたので、同じ窯でも上と下の温度差によって色ムラが出ていたのですが、現代の窯ではほとんど色ムラが出ず、均一な色が出てしまいます。それを顔料で調整し、3度色を変えて焼くことで、昔の色ムラを表現しているんですよ。

 床タイルなどは中国の輸入品が多く、いかに特注品の要望に応えられるかが課題です。弊社なら立体的なものなど形状の難しいものや手加工が必要なもの、小ロットでの生産も、ご要望に応じて対応することができます。

安藤 高い技術力があり小回りがきくこと、そして数々の歴史的建造物を手がけた実績と再現力の高さがアカイタイルさんの強みですね! そんな歴史的建造物などを未来へ残す「復元屋」プロジェクトについて教えてください。

赤井 東京駅もそうですが、歴史的建造物には多くのタイルが使用されています。近年は老朽化の問題で取り壊しが検討されているところも多々あります。そこで、「未来への継承」をキーワードに、ただ修復をするだけでなく、その建物の歴史や景観、その場所への人々の想い・思い出を記憶だけでなく実際に建築物として未来に残していきたいという想いから「復元屋」は始まりました。

安藤 最近では歴史的建造物以外にも、マンションやビルなどのお仕事もされているそうですね。

赤井 2011年の東日本大震災以降、関東を中心に1980年代、90年代頃に建てられたマンションやビルにクラックが入り、一部を補修するメンテナンスの仕事が全国に広がっている現状があります。弊社では、大規模修繕工事業者さんから注目いただき、既存のマンションやビルのタイルに合わせたタイルの復元、補修などの仕事を多くいただいております。

安藤 東京駅や東京中央郵便局での実績が認められたということですね。最後に今後の夢をお聞かせください。

赤井 ピーク時には常滑市内に20社近くあったタイルメーカーも現在では5社となってしまいました。私たちは常に新しいことにチャレンジすることを心掛けてきました。今後のチャレンジとしては復元、補修の仕事を増やしていきたいです。歴史的な建造物などを復元し、未来へと残していきたいですね。中国が真似できない、弊社にしかできない技術で、逆に中国の富裕層をターゲットにするというのも面白いと思います。「ここまではできないだろう」という、お客様の期待を一歩超えるものを目指していきたいですね。

赤井祐仁 
株式会社アカイタイル 取締役社長


 高校卒業後はレーサーを目指して上京するが、プロの壁を目の当たりにし、帰省。「やるからには1番を」という精神で、父の後継者になることを決意し、タイル業界に入る。株式会社アカイタイルに入社。2006年に取締役社長に就任。復元屋プロジェクトを立ち上げる。新しいタイルの開発や、歴史的建造物の復元、小ロット多品種の対応など、常に新しいことに挑戦し続け、次代を生き抜くタイルメーカーとしてその可能性を広げている。


アカイタイル株式会社 
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復元屋オフィシャルサイト URL: http://www.fukugenya.jp
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