安藤 まずはどんなお仕事からされたんですか?

坂川 石材店はお客様にとって入りにくく、敷居が高いお店だと思うんです。何も知らずにお店へ入ると、買わされるんじゃないかと。そこで、自分たちから情報を発信してお客様に伝えていくことで、敷居を低くしたいと思いました。

 まず始めに着手したのが店作りです。当初はお墓も外に出ていなかったので、どんなお店かも分からなかったんですね。だから目を引くようなデザインのお墓などを、ある程度キレイに配置しました。それから、従業員の教育です。ここで携帯電話ショップでの経験が生きるのですが、電話のとり方からお客様との接し方までしっかりと指導しました。また、商談デスクの設置やお墓のミニチュアサンプル製作もしました。気になったところ、気付いたところはすぐに変えました。スピードが大事だと思ったからです。また携帯電話会社で働いていた時代に、とにかく新しいことにチャレンジしている企業の姿を見て、そこまでしないとお客様は来てくれないと感じたんですね。待ってるだけじゃダメなんです。自分から動かないといけない。それには武器も必要だと思って試行錯誤していたら、お墓の地震対策をしている『安震』さんに出会いました。

安藤 『安震』さんとの出会いについて教えて下さい。

坂川 全国には頑張っている石材店さんがたくさんあるはず。その方たちはどんな取り組みを行っているのかを知りたいと思い、WEBで検索をしていたんですね。いろいろ見ていると、『安震』というキーワードがたくさん出てくることに気付いたんです。それで「何だろう?」と思い、『安震』さんのホームページを詳しく見たら、是非お話を聞いてみたくなったんです。でも大きな会社だったので、今までだったらあきらめていたと思います。でもその時は、変えたいという気持ちの方が大きかったので、思い切ってメールを送りました。そうしたら、すぐに『安震』の光岡さんから電話を頂き、昨年の6月に加盟しました。現在、2ヶ月に1回勉強会を行っているのですが、そこで本来のお墓の在り方やお墓への想い。また、想いのお墓づくりという考え方を学びました。

 同年の12月には、全国優良石材店にも認定され、物売りの考えではなくお墓づくりに対する疑問や心配などにすべて答える石材店として走り出しました。私は、お墓本来の意味をしっかりと伝えてから売りたいと考えておりますので、こういったツールを使ってお客様と対話し、お客様の考えをまとめてあげられる、安心を与えてあげられる。これは、この地域の石材店さんにはない坂美石工所だけの強みだと思います。

安藤 自分から動いた結果が実を結んだんですね。

坂川 はい。実は『安震』さんに加盟する際、「先行投資はしない」と母に猛反対されました。でも、「チャレンジしないと何も変わらないから」と粘り強く説得したんです。そして5月には、30周年の記念イベントも開催しました。そこで、デザイン墓を多く展示して、お墓にはたくさんのデザインがあり、故人の想いをカタチに出来る時代になったんですよ。と情報発信する工夫をしたところ、70組130人ほどの来店がありました。また、そのタイミングで広告も出したんですよ。とにかく昨年は、様々なことにチャレンジしました。その成果が、今年の売り上げ倍増以上のペースという結果に繋がっていると思うんです。そして新しく従業員を雇うこともできて、やっとスタートしたという実感を得ました。

安藤 地域でイベントを開催することが敷居を低くすることに繋がってるんですね。他の石材店さんと違う取り組みは他にも?

坂川 1番力を入れているのはお客様との対話ヒアリングです。具体的に言うと、来店されたお客様のほとんどが、「お墓建てるのにいくらかかるの?」か「お墓を建てたいんだけど、どうすればいいの?」という2パターンなんですね。そこでまず聞くのは、『宗旨の決まった建て方 ・ 周りの墓地に合わせた建て方 ・ デザイン・オーダーメイド』の4つのうちお客様はどの建て方をご希望ですか? とヒアリングします。そうすると、ほとんどのお客様が「宗旨によって正しい建て方があるんですか?」となるんですね。そこから、本来お墓が持つ意味をお話します。他にもどうしてお墓を建てようと思ったのかという理由をしっかりお聞きし、故人またはお墓を建てられる方の想いをお墓にも表現できますよという 話などをします。既製品ではなく、お墓を建てる方の想いをしっかり聞いてからお墓のカタチを作っていく。ヒアリングの結果、従来のカタチのお墓になってもいいんです。大事なのは、お墓の選択肢を作ってあげることで、お客様が納得したお墓を建てることができることだと思うんです。

安藤 お墓に対する経験がないから、それを情報として伝えることでお客様が納得したお墓作りができる。ヒアリングは大事ですね。最後に、今後の夢をお聞かせ下さい。

坂川 価格競争になってしまっているこの地域のお墓業界の考えを、本来お墓が持つ意味を伝える考え方へと変えたいんです。故人と残された方々とを繋げるお手伝いをするのが、私たち石材店の役目。お墓と言うのは、残された者の心のよりどころでもあります。だから、お盆やお彼岸の時だけ訪れる墓地ではなく、もっと数多く訪れる墓地にしたいんです。それには、故人の想いをカタチにするお墓や、ご家族の近況をご先祖様に報告したくなるようなお墓が増えることだと思うんですね。そこで、お墓屋さんに見えない石材店を作りたいと考えております。デザインセンターという名の全く新しい店舗を作り、気軽に多くの人に足を運んでもらいたいと思っています。そして、幅広いデザインのお墓を多く展示し、まるで公園のような空間にしたい。出来るだけ敷居を低くすることで、多くのお客様に来店していただき、分かりにくいこの業界の事を立体的に発信できる店作りを目指しています。

坂川昌史 
坂美石工所 専務


 昭和53年1月13日、福井県にて生まれる。高校からテニスを始め、インターハイに出場。推薦で大学に入学。卒業した2003年から2010年の7年間、福井県のランキング1位を維持し続けた体育会系の墓石プロデューサー。家業である石材店を継ぐが、昔気質のお墓業界に失望し退社。大手携帯電話ショップで得た接客と営業力をもって家業に戻り、常にナンバー1を目指し、業界の常識を打ち破ろうと新しいことにチャレンジし続けている。


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