ハイドロカルチャー(水耕栽培)に特化して観葉植物を育て、販売する有限会社三浦園芸。世界中11カ国から植物を輸入し、観葉植物の出荷鉢数は日本トップクラスだ。ハイドロカルチャーの新しい形を常に模索している代表の三浦基彰、その熱い想いにサムライ日本プロジェクトの安藤竜二が迫った。

安藤竜二(以下安藤) 三浦社長は二代目ということですが、先代が園芸の会社を設立したきっかけは何だったのですか。

三浦基彰(以下三浦) もともと園芸が趣味のサラリーマンだったのですが、独立精神が旺盛な人で、私の誕生を機に24歳で退職したそうです。その後、洋ラン農家で2年半ほどの研修を経て、1970年に100坪くらいの温室を作って2年ほど洋ランの栽培を続けました。しかし洋ランは1年のうち10ヶ月が栽培、残りの2ヶ月だけが売り時という、ビジネスモデルとしてはかなり偏ったものでした。洋ランだけでは経営が難しいということで、始めたのが観葉植物だったそうです。

安藤 当時、観葉植物は一般的なものだったのですか。

三浦 いいえ、ちょうど観葉植物の文化が日本に入り始めた頃で、父自らアジアへ買い付けに行った植物がよく売れたそうです。特にポトス、シンゴニウム、ドラセナの3種が大ヒットし、ガラス製温室を500坪建設するなど設備投資も行っていきました。しかし、より敷地の広い農家さんが同じ商品を栽培され、価格が崩れていってしまうのが悩みの種でした。そこで、簡単に真似されない栽培方法はないだろうかと目をつけたのが、当時は全然知られていなかった「ハイドロカルチャー」でした。

安藤 今や三浦園芸さんの代名詞ですが、そもそもハイドロカルチャーとは何ですか?

三浦 簡単に言えば、土を使わない「水耕栽培」です。「ハイドロ」は水、「カルチャー」は文化ですが、文化の語源が「耕す」、つまり「栽培」であることから水耕栽培となります。水耕栽培と言うと野菜の栽培と思われがちですが、園芸分野の中ではハイドロコーン(発泡煉石)を用いた栽培のことを言います。

 ハイドロコーンは粘土を1200~1300℃で焼いた粒状の人工培土で、1980年頃からオランダより輸入され始めました。特徴は半永久的に再利用でき、エコであること。そして一般的な園芸用土は有臭でカビ・雑菌の温床となりやすいのに対し、それらのリスクがほとんどなく清潔です。土に比べ軽い上に保水性も良く、水やりの回数が少なくて済みます。

安藤 ハイドロカルチャーの文化がなかった日本で、どのように勉強されたんですか。

三浦 父はヨーロッパ各国に渡って勉強をしてきたそうです。現地のホテルや病院では必ずと言っていいほど、ハイドロカルチャーの植物が置かれていました。日本でも衛生的な観点から、病院では土のある植物は置けなかったのですが、これなら病院に緑を置けるのではないか、そして靴を脱いで家にあがる清潔好きな日本人には必ず受け入れられるはずだと確信したそうです。

 当初は資材を輸入し、見よう見まねで始めたのですが、ヨーロッパの資材では規格が合わず、まずは専用の鉢作りからスタート。全体の生産量の1割くらいから導入を始め、失敗を繰り返しながらも徐々に栽培のコツをつかみ、10年ほどかけて100%ハイドロカルチャーにシフトしました。

 販売の面では、お客様の中にある「土でなければ植物は育たない」という先入観が大きな壁となり、当初は市場で受け入れられませんでした。そこで新しい販路を探さなければ、とデザイン性の高い植物を扱っていた貸し鉢(リース)業者さんと組み、商品開発を進め、販路を開拓。ホテルや病院などに卸させていただけることになり、中でも帝国ホテルに置かせていただけたことは大きく、それを機に受注が増えていきました。