安藤 「食の会」という、ハイホームスさんの事業とは関係なさそうな会も主催されていますよね。

杉村 店舗や店舗付住宅を施工させていただく機会に恵まれまして。お蕎麦屋さんを任せていただいたら次にお米屋さん、そしてケーキ屋さん、八百屋さん、お肉屋さんといった具合に、紹介によってどんどん繋がっていったんです。そこで、弊社でお店づくりをお手伝いさせていただいたお店を結ぶ「食の会」を発足。皆さんで集まって、勉強会を行ったりしているんですよ。

安藤 ハイホームスさんと言えば「大沢ヴィレッジ」の取り組みも見逃せませんね。

杉村 藤枝駅から北へ車で30分ほどの大沢地区の一角にある大沢ヴィレッジは、当初お客様が窯でレンガや炭を焼いたり、鍛冶仕事の体験ができる作業所(山の沢工房)を作ろうと計画していたものです。ところが大沢地区の集落では、崖くずれの危険から立ち退きを余儀なくされ、里から人が去っていくという現実がありました。大沢ヴィレッジにある古民家はその中の一軒を譲り受け、移築したもの。住んでいた方のお名前を頂き「青のさんっち」と名付けました。昭和初期に作られた家を解体させていただくと、それがもともと解体移築できるように作ってあることが解ります。かつての日本の家は受け継ぎ循環できる家であり、「一度つくったら後は壊すしかない」という、昨今の家のつくりとは全く違うものでした。

 「青のさんっち」の移築体験は私たちにとって、先人の技術への尊敬と、そこにあるもの、思いを生かしての家づくりへ大きな自信となりました。時代はストック重視の社会に向かっています。大切なのものを残し、豊かな暮らしを住宅リノベーションが担う、そんな時代です。私が住んでいる家も7年前リノベーションしました。耐震強度を上げ、OMソーラーや大井川の森の木を生かし、古い家の良さを繋ぐことができました。リノベーションしたことで、とても気にいっていることがあります。それは、裏庭の大きなつつじの木がどこからでも見えるようになったこと。あれから毎年5月になると沢山の花をつけ、私たちをとても気持ちよくしてくれます。「家は手をかけて心地よさ、うれしさを育んでいく」という「育暮家」の考え方はこうして深まっていきました。

安藤 杉村社長の柔和なお人柄や真面目さ、お客さんを想う心が伝わることで、お客さんがお客さんを呼ぶという好循環を作っているんですね! 最後に今後の夢をお聞かせ下さい。

杉村 「育暮家」とともにある、一大テーマが世代交代です。若いお客様との世代ギャップはデザイン感だけでなく価値観のギャップにもなっているとの思いがありました。実は最近まで自らの世代交代、一線から退くことばかり考えていました。それが、ある30代の施主様とお付き合いさせていただいたことを機に一変しました。

 限られたご予算をどう振り分けどこに向けるか、それは考え方で大きく左右する部分です。例えば設備装備、最新鋭のスペックは魅力的です。でも設備は老化もするし、また新しくもなります。それだったら、次第に良さを増し街並みも美しくする外廻りへ予算を回してはどうか。私の提案はいつも「まず10年後を目標とした家づくり」です。選択して頂いた答えは「トイレは機能重視でよしとし、手を掛けて魅力を増すところに予算をあてます」でした。そこから外構計画にも力が入って行きました。お話や打ち合わせを重ねる度に、価値観の近さを感じることができました。心配していた世代ギャップは、単なる私の中の気持ちのギャップに過ぎず、心配するより積極的な会話が大切だと思うようになりました。一線を退こうとしていた私に、家づくりへの新たな力をもらった体験でした。

 先に「信頼関係はお互いの財産」という話がありましたが、住宅は物理的な財産ではありますが、目に見えない信頼関係こそ私たちにとっては大きな財産です。信頼関係があってこそ、様々なご提案や問題解決もできます。この財産を多くの皆様、スタッフと共有し、10年先にそこに住んでいる風景を思い描きながら、お客様に満足いただける家づくりを続けていきたいと思います。

 

杉村喜美雄 
株式会社育暮家ハイホームス 代表取締役


 1950年生まれ。一級建築士。幼い頃より木に触れて育ち、高校では建築を専攻。地元ゼネコンに勤めた後、34歳で株式会社ハイホームスを設立。今でもその存在理由を常に自らに問いかけることを忘れない。「大切なものを残していきたい」という気持ちで、家づくりに携わる。


株式会社育暮家ハイホームス 〒426-0063 静岡県藤枝市青南町2丁目8-7 
TEL:054-636-6611 FAX:054-636-6624 
URL:http://www.hihomes.co.jp